お釈迦様はあの世の存在を説かれたのかという質問がありました。あの世をこの世と同時に存在する世界という意味であれば、お釈迦様は説いていませんが、過去世や来世については、原始仏典に何度も説かれています。それによれば、臨終の後、今生の行為が引き継がれて、他の生命に生まれ変わるという事です。生まれ変わりを繰り返すことが輪廻であり、苦しみの原因であるので、輪廻を脱するのが解脱であり、解脱とは二度と生まれ変わらない事を意味します。
しかし、この教えには二つの問題があります。一つ目は、仏教では無我を説き、魂を否定しているのに、何が輪廻するのかという問題です。輪廻の根拠は、すべてが因果の道理で成立しているので、一つ一つの行為や言葉の影響は生き続けて次の生命に引き継がれるという事です。過去世の記憶は引き継がないが、別の生命に生まれ変わるということです。別の生命になるなら生まれ変わりとは言えないのではないかと思われかもしれませんが、そもそも、今の私と昨日の私は同一ではない(無常、無我)ので、それを自覚すれば、問題は解決します。
二つ目は、解脱によって、今生で終わるよりも、来世に生まれるほうが幸せではないかという疑問です。それに対してお釈迦様は、来世を望むことを否定しておりません。ただ過去世や来世に執着して、今を疎かにしている修行僧に対してお釈迦様は無記とされ、問題にするなと諭されたのだと思います。
いずれにしても来世の有無に関わらず、今を生ききるのが、お釈迦様の真意であり、それを実証するのが禅であります。また、今回の参禅会を最後に、定期的な坐禅会は休止いたします。個別の坐禅指導は日時の調整をして、随時受け付けておりますのでご連絡ください。合掌