前回の坐禅会で、同じ景色、同じ道は二度となく、常に新しい体験であるということをお話ししました。これに関連した教えに一期一会という茶道の言葉があります。初めて会った人に、もう二度と会うことがないかもしれないけれども、精一杯尽くしましょうというのが一般的な解釈ですが、本来は、いつも顔を合わせている家族や友人も、同じ出会いは二度となく、その時その時が常に新しい出会いであるから、今を大切に過ごしましょうというのが、禅の精神です。
子供と遊ぶのが好きな良寛様は、子供たちに「良寛さん」と呼ばれると「はーい」と返事をし、しばらくたって「良寛さん」と呼ばれると「はーい」と何度も繰り返したというエピソードがあります。子度たちはただ良寛様をからかっているつもりでも、良寛様は悟りを開かれた禅僧ですので、何度も同じ名前を呼ばれて,からかわれているとは受け取らずにその都度返事をされたという、まさに一期一会の行為を自然にされていたということだと思います。
食事をする時にも、いつもいただいているご飯も常にその時々の新しい味わいがあるということです。
見るもの、聞こえるもの、感じるもの全てが一期一会であるということを体感するのが坐禅です。