なぜ人は生きるのか

 

以前に参拝者から、なぜ人は生きるのか?という質問を受けました。なぜ生きるのかという問いは、哲学や道徳の思想から言えば、幸せになるためと答えるのではないでしょうか。では幸せとは何かと考えると、一般的には、財産があって、やりがいのある仕事をして、円満な家庭を築いて健康に過ごすことが幸せの定義のように思われていますが、これらの思想はあくまで考えや思いの世界であって、実物ではありません。思いや考えは捕まえることができないその時その時の状態にすぎないのです。

 

 悩みや怒りはすべて自分の心が作り出しています。その心は一瞬一瞬変わり続けます。例えば今、怒りを感じてもその怒りは一定ではなく、いつかは消え去ります。また、怒りがあるとわかるのは、怒りがない状態があったからこそ、認識することができるのです。

 

  ですから、なぜ生きるかを思想で解決しようとしても、絶対に完全な答えは得られません。考えや思い、感情は前述したように一瞬一瞬変わり続けるからです。思想と事実の違いをはっきりさせることが本当の安心につながります。それを体現するのが坐禅です。